心のこもった支援

豊川市へ通いながら支援を続ける

山口宏明
山口宏明

 Hさんから私への相談は「疎遠になっている兄が入っている老人ホームから『相談したい』と言ってきているが、どうしたらいいか分からない。電話も掛けづらい」でした。詳しく聞くと、お兄さんは若い時に親に反発して家を飛び出しその後音信不通に。十年ほどたって、仕事で指を負傷、精神にも変調をきたし統合失調症に。住民登録のあった名古屋の区役所の福祉課の助けで寮生活を送り、その後豊川市の老人ホームに転居。このたびその施設から「要介護3で常時介護の対応が難しくなったので、当施設を退去して別の特別養護老人ホームに移ることになるので、その際の身元引受人を」求められたということでした。Hさん自身も健康を損ない、長年続けた個人タクシーを廃業する状況で、疎遠にもなっていた兄の援助も困難だとの訴えでした。

 身元保証を行っているNPO団体からの費用見積書も用意されていました。事務局では、「NPO法人おひとりさま」と打合せ、遠方の三河部ではあるがHさんが私たちを信頼して相談をされたことで、ぜひお兄さんの身元保証、生活支援を「NPO法人おひとりさま」が引き受けることを決めました。  

 病気と怪我がもとで身体障がい者、精神障がい者となり、わずかな障害者年金で介護をうけながらのお兄さんの生活は厳しくなることが予想されます。

 今後、福祉施設、行政の力も借りながら余生を送られるよう見守ってゆくことになります。              

                        支援員 山口宏明 

「本人の自己決定権を大切に」

安藤満寿江
安藤満寿江

 春日井市のケアマネジャーIさんは、この数年、パーキンソンを患い転んでは入退院を繰り返す一人暮らしの80代・男性Tさんを担当してみえます。退院をひかえてのケース会議、車イスのTさんは自宅へ帰ることを強く要望。Iさんや病院のソーシャルワーカーさんたちが「施設に入所してリハビリを続けましょう」と勧めても「家に帰るためにリハビリをがんばっている」と固辞されます。2度目の会議でTさんはやっと納得され、おひとりさまの身元保証の契約書にサインをされました。

  2週間後Tさんの通院のためショートステイ先に出向くと、「ここはコーヒーも出るよ。手もこんなにきれいになった」と喜んでみえました。そして通院は車イスでなく杖でOKに。

 訪問介護を受けながら、住み慣れた自宅での一人暮らしが一番かもしれません。でも、ご病気の方には施設が必要です。それにしても、ケースワーカーの方々が、説得するのではなく、「決めるのはご本人」と気長に待たれていたことにいたく感動しました。1ヵ月後の通院支援でTさんにお会いするのが楽しみです。            支援員・安藤満寿江